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2008年12月 5日 (金)

マクドナルドの椅子はなぜ固いのか

というマーケティングの世界では有名な寓話があります。

マクドナルドの椅子はなぜ固いのか?

答え。それは客の回転率を上げるため。

と、一般に言われています。
優秀なマーケッターがそう分析したことが定説として定着しただけで、
マクドナルドが実際にそのような目的で椅子を固くしているのか
どうか真相は不明ですが、よく聞く話です。

この話のポイントは客にそれを気づかせないという点にあります。
普通の混み合ってるレストランで長居をしている場合、店員が
「混み合って参りましたので席をお空け頂けますか?」と声をかけます。

椅子を固くする →座り心地が悪い →そもそも客は長居しない

このような仕組みが「空間的に」組み込まれていること。
更にそれを客に悟らせないこと。これらの点でマクドナルドの
システムは巧妙でラディカルな戦略です。

このように空間は人の行動を知らず知らずに制御・規制してしまう力を
持っています。規制されている側が、そもそも規制の存在自体に気づかず、
知らないうちにコントロールされてしまうような仕組み
を法学者の
ローレンス・レッシグは「アーキテクチャ」による規制、という概念で
形式化しています。

レッシグはインターネット上のモラルや法の在り方に関する権威ですので
インターネットでは設計者の意図次第でこのようなアーキテクチャによる
規制によって知らず知らず自由を奪われてしまうことの危険性について
言及しているのですが、このような規制方法はマクドナルドの例に
もれず、現実の空間にも当てはまります。

ここで(システム用語上の)アーキテクチャという単語はそのまま
アーキテクチャー(建築)と置き換えても問題ないでしょう。
建築=物理的環境は、本質的にアーキテクチャの規制を伴います。
というより、そもそも人々の行動を規制するハコが建築だと言えます。

アーキテクチャによる規制は、規制されている側が気づかないところが
ポイントでした。逆に言うと、アーキテクチャによる規制を解除する
ことで見たこともないような新しい発想が生まれるということでもあります。

iPhoneが素晴らしいのは、知らず知らず電話以外の機能を使うような
アーキテクチャを持っていることです。iPhon以前は、画面も小さく、
電話はかけやすい一方でネットをしたり音楽を聴くには使いやすいとは
言い難いものでした。それはそもそもそのように設計されていないからで
あくまで電話をかけるものとして作られていたからです。ところがiPhoneの
アーキテクチャはネットや音楽や動画を楽しむようユーザを促します。

また、グーグルのページランクという仕組みは知らず知らずのうちにユーザ
に対して良質なリンクを貼ることを要請するアーキテクチャと言えます。
(グーグルはリンクを貼りなさい、と決して命令はしません。ところが
 我々はリンクを貼ることがグーグルに貢献するとは思ってもいない!)

また、検索結果の表示がランキング表示されるというアーキテクチャは
我々にSEO対策をするよう要請します。ついでに代理店は儲かります。
もしグーグルがランキング表示の形式をしていなかったら・・例えば
検索結果がランダムに表示される仕組みが普及していたら・・
今とはまったく異なるルールがウェブを支配していたかもしれません。

ミクシィのあしあと機能は「覗き見」を禁止するアーキテクチャです。
(人のページを覗き見してはいけないという規則はないはず。
 ところが足あと機能は覗き見するなと「倫理的に」要請する)

確かにレッシグの言う通り、ウェブにおいてアーキテクチャによる規制は
非常に効力を発揮するのかもしれません。某国におけるWeb検閲のように
いくらでもユーザから自由を奪ってしまうことが容易にできる一方で、
秀逸なアーキテクチャを構築することはインターネットビジネスで成功する
秘訣だとも思えるのでした。

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